こんにちは。凡才博士です。今回は博士課程の締めくくりであるD論の製本作業について紹介しようと思います。ざっくりまとめると、学振の科研費でD論を製本すると自己負担0円で卒業が出来てお得という事です。
学振を持っていない方も製本方法について少しでもお力になれるように、ご紹介いたしますので何とか安く製本できることを願っています。博士課程の締めくくりですので、ばっちり製本したい所ですね。
製本の基礎知識
もしかしたら修士で自分の修論を製本した方もいるかと思いますが、実はこの製本作業はなかなかお金も時間もかかり厄介です。D論審査が終わって焦って取り組む前に、一度製本の制度や基本を押さえておきましょう。
Step1:原稿・表紙・背表紙を作る
まずは肝心な原稿ですよね。(笑) 原稿無くして卒業は出来ません。原稿に対するアドバイスとしては得にありませんが、お得にする方法としては①白黒印刷に対応できるような図を作成する②無駄に論文のページ数を増やさない事くらいです。
一般のコピーと同じようにカラーコピーだと1ページ当たりの単価が上がります。(笑) なのでどうしても安く抑えたい方はモノクロ印刷にするとコスト削減が出来ます。(笑)またページ数も上質な紙を使いますので、無駄にページ数を増やすと無駄に印刷する事になります。
表紙と背表紙のイメージは以下のようになります。A4ですぐに印刷できるようにWordで事前に作っておくといいですね。英語タイトルと日本語タイトルを入れる等皆さんのこだわりのある表紙のレイアウトにしましょう。
表紙のレイアウトは何でもOKなのですが、背表紙だけは注意が必要です。D論のタイトルが英語の場合自然とタイトルが長くなってしまうことが多いのです。そうすると1行に収まりきらず、2行でタイトルを背表紙に入れる事になります。
2行になると今度は厚さが問題となってきます。D論のページ数がある程度無いと、2行入れられるほど本の背表紙の厚さが無くなってしまうのです。なので、今からD論タイトルを決める場合は、なるべく短くした方が無難ですね。
Step2:ハードカバー・ソフトカバーを決める
次に論文の外側である「ハードカバー」と「ソフトカバー」を決める必要があります。ハードカバーとソフトカバーのイメージはこちらのようになっています。ハードカバーは教科書のように固い表紙で、大体黒か赤色がメインの色になってきます。黒は重厚感あふれて重みがあります。逆に赤は海外のようでお洒落です。こちらは出来上がりのイメージで決めましょう。
ソフトカバーは美術の授業の良い感じの画用紙にくるまれているようなイメージです。紙は画用紙のように分厚いですが、ハードカバーのように固くはなく安いですね。
何冊分をハードカバーにして、何冊分をソフトカバーにするかまず決めましょう。例えば指導教員や両親に配るような物にはハードカバーになりますね。ソフトカバーは研究室にいるポスドクとか後輩などそこまで重要でない人に対して配ればいいと思います。ここはあくまで研究室の風習によると思います。
個人的にはソフトカバーを貰っても扱いに困りますし、重いのでPDFにしてくれるのが一番うれしいですし、保存も聞きます。図もPDFなら奇麗なままコピペできますしね。なので論文の製本はあくまでも記念です。実用性はまるでありませんので、出来れば安く済ませたい所です。
ソフトカバーの表紙の画用紙は色々な種類のものを選ぶことが出来ます。色で金額が変わる事はほとんどありませんので。自分の好きな色を選びましょう。用紙の種類は頼むところで違いますが、イメージは以下のような感じです。ちなみに私は黄色が好きだったのでレザックの玉子色です。(笑)
ハードカバーの表紙はさらにオプションを付けれる所が多いです。そのオプションというのは文字の「金(銀)箔押し」です。まるで金沢旅行を思わせるように金箔押しを勧められます。金箔押しとは金や銀の紙を熱と圧力で紙に定着させるという印刷方法です。
印刷部分には若干の凹凸ができ、金箔がこすれたときに剝がれないように、文字が少し凹んで印刷されます。この文字が凹んで金色にするのにもオプションでお金がかかる場合があるので注意が必要です。
Step3:本文の用紙・製本方法・原稿の送付
ここまで決定してようやく最終ステップです。まずは、本文の用紙をどのような種類にするか決めましょう。本文の用紙は普通のコピー用紙だとやはり白さと厚さの上品さが無くなってしまいます。普通のコピー用紙よりも少し厚く白い上質紙なるものを使いましょう。これがまたコストが上がる要因でもありますので、あまり良い上質紙でなくてもいいかと思います。
また表表紙・裏表紙をつけるかというのも選ぶことが出来ます。いきなり本文に入るのではなく、1枚白いページをめくってから本文に入るという形ですね。正直いらないのではないかと思いますが、大体の本は表や裏表紙が入っております。ちなみに私はセールスされて入れました。(笑)
最終的な製本方法を決定します。特にこだわりが無いかと思いますが、D論はそこまでのページ数にならないと思いますので。「無線綴じ(くるみ製本)」で十分かと思います。無線綴じは以下のように背面を糊で付ける事によって製本するやり方です。D論がかなり厚い方は糸で縫ったりしないといけないので、さらにコストがかかってしまいます。無線綴じで十分でしょう。
最後に各原稿を大体DCに焼いて送ります。会社によって指定のフォーマットが違いますので、大体PDFかWordですが、しっかり確認しましょう。PDFの場合は文字化けしている所がありますので。くまなくチェックしましょう。
あとは製本を待って出来上がりです。(1冊だけ見本で先に送ってくれる所もあります。ミスが無いか良く見直しましょう。)以上が製本の基本ステップでした。これをよく分からないで私は生協に駆け込んだため、理解するのに時間がかかってしまいました。
製本にかかる料金
さて、次は肝心のD論の製本にいくらかかるか?についてです。D論の製本を頼む場合は大体次の2パターンです。
- 大学生協に依頼する(メリット:かなり楽・場合によっては科研費が使える、デメリット:高い)
- ネットの印刷会社に依頼する(メリット:安い・オプションが多い、デメリット:手続きが大変・科研費が使えない場合もある)
両方の場合に共通しますが、絶対に覚えておいてほしい事があります。それは、製本の納期を早くしようとすると追加料金がかかるという事です。そうです、製本をギリギリでやろうとすると特急料金がかかるのです。金さえ積めば早く印刷してくれるのです。
しかし、出来上がる本の内容は一緒ですのでわざわざ高いお金を払う必要はありません。製本するのに最低でも1週間はかかるのは頭に入れておきましょう。卒業シーズンに依頼が殺到するため、運が悪いと2週間待たされることになります。とりあえずD論の中身が完成したら、なるべく早く製本作業に取り掛かりましょう。大体は引っ越し等も伴うので、実はあまり時間が無いのが事実です。
大学生協の製本料金
それでは、まずは最も一般的に行われているであろう、大学生協の料金について見ていきましょう。以下が東大生協の製本カタログになります。
生協は製本工場を持っているようですので、大体全国どこでも同じような価格で取り扱いがあります。窓口も生協で毎年行っているので、説明も分かりやすいです。
上記の画像は「原稿持ち込み製本」のコースになります。原稿持ち込みですので、原稿の印刷はしてくれません。あくまで原稿の表紙を包むだけの値段になります。原稿はあらかじめ自分でコピーして必要部数を持っていく必要があります。正直かなり紙が重いですし、ページの順序が違う場合でも自己責任人です。
上記の金額以外にも考慮しないといけないのが、紙の代金です。紙は普通のコピー用紙ではなく上質紙(厚口・中厚口)なる、ちょっといい紙を使います。これがまた微妙に高いのです。Amazonで探しても1枚8円もします。
つまり200ページのD論ですと、裏表印刷なので100枚の上質紙が必要ですね。よって1冊作るのに+800円のコストが加算されます。またインク代はどうするのか?といった疑問もあると思いますが、インクまで買うとかなり高くなりますので、研究室のプリンターを使わせてもらいましょう。
かなりの枚数を印刷する事になると思いますので、プリンターは1日フル稼働する形です。かなり熱くなって待たないといけない場合もあるかもしれません。また紙詰まりが起こった時には最悪で、どのページが印刷されていて、どこが印刷されていないのか全く分からなくなる場合があります。そのあと1冊ずつの原稿に分けるのも中々の手間です。自己負担を少なるするには、原稿持ち込みがベストですが、原稿印刷までにかなりの労力がかかるのは事実です。お金が無い場合はこれしかないですよね。
「原稿持ち込み製本」の場合のざっくりとした金額を出すと以下のようになります。中5日で大体10冊以上は作るとして、
3,927+800=4,727円 裏表表紙とかオプションを入れると大体1冊5000円ですね。これを10冊なのでハードカバーだけで5万円もしてしまいます。ソフトカバーは半額くらいで作れますので、なるべくハードカバーの冊数を減らしたい所です。
それでは次は全部お任せパックの「データ持込み製本」の金額を見てみましょう。
先ほどまでは、論文の中身となるページは持込みでお願いしていました。しかし、お金さえかければ印刷から製本まで全てお任せで生協で行ってくれます。そうです、金なのです。
全てお任せの場合はPDFデータで持ち込みますので、気を付けるべきところはフォントの埋め込み作業だけになります。要は文字化けだけ注意深く見てCDに焼いておしまいです。実は私はこっちのパターンで製本しましたが、本当に楽です。研究室の同期がプリンターと戦っているのを片目にCDを提出するだけです。お金さえあれば圧倒的お勧めです。
肝心のお金なんですが、製本代は何故か「原稿持ち込み製本」と変わりありません。追加される分は論文本文のコピー代だけです。図の②の所ですね。
もちろんカラーと白黒で値段は違います。中厚口紙を使うからでしょうか、カラーが最高で51円/ページです。劇高です。白黒は1ページにつき10円くらいというのに、何故かカラーだけ値段が吊り上げられてます。
大体の値段についてですが、私の場合図があるカラーが40ページくらいで、文字だけの白黒部分が100ページくらいでした。ソフトカバーとハードカバーを合わせて20冊以上作りましたので各単価は以下のようになります。
- カラーページ:46円×40=1840円(1冊あたり)
- 白黒ページ:9円×100=900円(1冊あたり)
よってハードカバー1冊あたりの値段は、3,927(製本代)+1,840(カラーコピー代+900(白黒コピー代)=6,667円≒6,700円(ハードカバー1冊)
このようになる訳です。原稿持ち込みと比べてお任せパックでは1冊あたり2,000円ほど高くなってしまいました。2,000円を節約するためには、原稿は自分でコピーした方がお得です。なんだかんだで私の場合、ハードカバーとソフトカバー合わせて15万ほどかかりました。
正直めちゃくちゃ高いと思います。出来る事ならなるべく印刷する冊数を減らしたいです。よく考えたらハードカバーの論文なんて自分でも開かないんですから、他人が開くわけありません。PDFで十分なのです。しかし、研究室の習慣とか記念とかで作らねばいけないのです。これが博士の最後の仕事ですから。
大学生協の製本は原稿持ち込みと全部お任せの大体2パターンで、金額はご紹介した通りとなっています。安くても大体5,000円くらいでハードカバーの物が1冊作れるといった感覚です。窓口も対人で受け付けてますので、何もかもめんどくさい場合はこちらがお勧めですね。
ネット印刷の製本料金
ネット印刷はネットの製本業者&印刷業者を探して、そこにお願いする方法の事です。正直生協で頼むより安いですし、選べるオプションも多いのが特徴です。また最短納期1日なんてところもありますので、緊急時にも使えます。(ただしかなり割高になりますので、お勧めしません。)
ネットで良さそうな製本会社の料金表を以下のURLにいくつかピックアップしておきました。生協とは異なり、各会社で金額が異なりますので、製本時間と金額を考慮して自分に合った所にお願いするのが一番いいと思います。(単純な印刷やソフトカバーの製本でしたらバナーの会社が安いかもしれません。)
これらの印刷会社のハードカバーの製本代金を見ますと、大体1冊3,000円です。生協に比べてかなり安いですよね。製本の基本ステップはどこの会社も大体同じですので、ここまでご覧になった方は会社を選ぶだけで大体OKです。
正直、時間に余裕がある方でこういった手続きがめんどくさいとか思わないタイプでしたらネット製本が一番コスパが良いです。各社で見積もりを取ってどこが一番安くなるが見てみるのが良いかと思います。
ネットの全部お任せパックでも1冊大体5,000円くらいですので、自分で印刷するのがめんどくさいという方はネットのお任せパックですとかなり楽できるのでお勧めです。よって、自費で論文を製本しないといけない場合はネット製本が最もお勧めとなっております。
製本料金の節約方法
なるべく製本にかかるお金を抑えたい方に向けて、以下の方法をお薦めしたいと思います。出来れば製本にお金を掛けたくない方がほとんどかと思います。なるべく皆さんが実行可能な方法をご紹介しますので、自身の置かれている状況に合わせて最安の物を選んでいただければと思います。それでは、節約度順にご紹介しましょう!
学振の科研費(研究費)から自分で出す
こちらは学振マンしか取れない方法ですが、最も確実でして、誰にも迷惑を掛けませんし、自己負担も0円です。題名にあるように、年度末まで何とか論文印刷代の研究費を残しておきましょう。大体10~20万くらいを印刷代として残せば何とかなります。
科研費では「その他」として印刷費や複写費の計上が認められています。そのため、学振の成果として博士論文を印刷する際には印刷費として計上できるはずです。そのため、自己負担は0円で製本が出来るというからくりです。
研究室によっては学生に科研費を自由に使わせてくれない場合があるので、まずは科研費を管理しているスタッフに論文を印刷したい旨を伝えて許可をとるのがベストです。また印刷の発注先はほぼ生協になりますので、印刷OKとなったら生協の指示に従いましょう。(めんどくさいので全部お任せパックにしちゃいましょう。)
これは学振を手に入れた人だけが使える唯一の特典ですかね。日頃のお給料がただでさえ低いんですから、自分の研究結果を自費で出版するなんて嫌ですよね。学振を持っている方は、まずはこちらを検討しましょう。
指導教員に頼む
こちらは学振が無くても使える方法です。自分一人で何とかできないのが残念ですが、財源を持っている人=指導教員に泣きつくのです。科研費またはそれ以外の比較的自由に印刷費として使える研究費を教授は持っているはずです。(むしろ10万程度の研究費を使えない教授とは、、、?)
教授に頼める関係を構築している人は一度ダメもとでも頼んでしまうのが一番いいです。頼むというか研究費で印刷していいですか?と許可を貰うという事ですね。ざっくりとした金額も一緒にお伝えした方がいいですね。
無事先生からOKが出れば、こちらも自己負担0円で卒論が印刷できます。(もちろんハードカバーの1部は先生に送らないとダメですよ?)数10万が0円で済むのですから、気に入らなくても先生に頭を一度下げてみるのがいかがでしょうか?
残念ながら自己負担0円の方法は上記の2つしかありません。研究費を使って印刷する以外はどうしても自己負担が出てきます。次は自己負担が少ない順にご紹介します。
コピー+紙代を0円にして原稿持ち込みでネット製本
製本代にお金はかかるのは仕方ないので、もう割り切ってしまう方法です。自己負担になるようでしたら、ネットで製本してもらう方が安く済みます。
しかし、製本代は自己負担するとしてもコピー代と紙代は研究費で負担してもらうようにしましょう。コピー代に関しては、研究室で自由に使えるコピー機があるはずですよね?1日かけて自力で印刷する事にはなってしまいますが、研究室のコピー機で本文を印刷する事でコピー代を浮かせましょう。(トナーの残量がグングン減っていきます。コピー機が熱を持ち止まる場合もあるので、1日では終わらないかもしれません。)
紙代については、こちらも研究費で買ってはいかがでしょうか?特に安い内容なら先生の許可もいらないという場合は紙を買ってもらうことをお勧めします。大体生協で良い紙を扱ってますので、比較的学生が研究費を自由に使えるようでしたら紙を買っちゃいましょう。
紙を研究費で買ってもらい、研究室のコピー機で印刷すれば論文の本文のお金はかかりません。あくまで製本代のみを自分で負担するという事です。
全部自己負担だが最安の製本方法
研究費も使わせてくれない、コピー機も大量に印刷は使わせてくれない。こんなケチケチ研究室に所属しているあなたは辛いですよね。きっと手袋も使い捨てではなく、1日同じ手袋を使いまわしている研究室でしょう。ひどい場合はピペットのチップも手洗いです。
そんなひどい研究室に場合は早く出てしまうのに越したことは無いのですが、一応最安の方法をお伝えしておきます。
まず必要な物は紙ですね。今回はAmazonをご紹介しましたが、紙も多く買えば買うほど安いのです。Amazonで1000枚パックのもっと安い紙を探してもいいかもしれません。
次はカラーとモノクロが出来るプリンターになりますね。研究室のプリンターを使わせてくれないというのが中々信じられませんが、そんな方にはレンタルのプリンターサービスなるものがあります。
本来は年間契約ですが、こちらは月単位のレンタル契約で、さらにカラープリントが印刷し放題というのがうれしいです。インク代がかからないのが良いですよね。本来であれば1週間のレンタルで十分なのですが、流石にプリンターの短期レンタルは無いようです。
しかし、レンタル期間が長いことを利用すれば、さらにお得になります。そうです、同期の同じ環境に恵まれないドクターや修士の学生などと一緒にプリンターを使うのです。こうする事によって印刷代をかなり下げる事が出来ます。カラー印刷はし放題ですので要は紙さえあればいいのです。2人で半額、4人でシェアすれば75%オフで印刷できるのです。
最後の製本については、こちらは最安のネットを使うしか今の所方法が無いです。出来る事ならなるべくハードカバーを減らすことが重要ですね。ソフトカバーであれば安いので、どうでもいい先生とかはソフトカバーを配ってしまいましょう。他は全てPDFです。基本卒論なんてほとんど読みませんから。
「もうソフトカバーでも何でも冊子みたいになってればいいや」という方には上記バナーの印刷はいかがでしょうか?先生にはコミケ冊子のような論文を上げましょう。研究費で論文を印刷してくれない先生が悪いのです。
終わりに
今回は学生最後のお仕事である、卒論の製本について詳しく解説しました。今まで製本をしたことがほとんどかと思いますので、よく読んでいただければ問題なく製本作業は出来ると思います。しかし、製本はどうしても高くなってしまう物です。なるべく研究費でカバーしたいですよね。ポスター印刷についても少しはまとめてみたい物です。
本日も最後まで読んでいただきありがとうございます。何か皆さんの参考になれば幸いです。
コメント